かつて901系と称する試作車両が京浜東北・根岸線で活躍していました。製造メーカーの異なる3編成が製造され3編成とも仕様が異なります。
1992年。私は親父に「新しい電車に乗せたる」と言われ川口駅で901系を待ったのを覚えています(流石に何番編成かは分かりませんが)。側面の黒と水色の帯、ブラックフェイス、一枚の大型側窓、スタンションポールは子供の私にとってかなりの衝撃でした。
そして翌年、この901系の量産形式となる209系0番台がデビューします。
さて、この209系は安価・内装の安っぽさ・短寿命から鉄道ファンなどから「走ルンです」や「使い捨て電車」などと呼ばれて散々叩かれました。
値段を抑えて設計・製造されたから乗り心地は悪いのか? いえいえ、決してそうではありません。
仮にもVVVF制御を採用しているので加速衝動も少なく100km/h超の高速走行をしないため大きな横揺れ(蛇行動)も起こりません。ただ分機器が多い箇所では衝撃を吸収しようとしてかえってバウンドしてしまいますが……。
登場した当時は103系とか205系などの国鉄形が首都圏輸送を担っていたので比較した乗り心地が悪い……とは言えないでしょう。同時期に登場した他社の通勤形が高グレードだっただけで……。
ただ、苦しげにインバーターを唸らせる様はあまりに貧弱に見えたかもしれません。
■車内全景
まさにプレハブ小屋電車……それは701系か。色使いからしてある一定の方向を目指しています。というか徹底しすぎです。ですが「寒く」はなく「スッキリ」と言ったほうが正しいでしょう。
■座席と座席仕切り
数々の波紋を呼んだ硬い座席です。長時間の乗車はかなり苦痛。
■側扉と車椅子スペース
子供の頃、手掛けが片方の扉にしか設置されていないのはかなり衝撃的でした。たしかデビュー時にドアエンジンの検証番組をやっていたのを覚えています(比較車両が103系だったような)。
…………ってオイ! ドアに隙間あいてるぞwww
■乗務員室後方スペースと連結面
後の車両に受け継がれていく乗務員室仕切りと連結面です。連結面の扉はあえて省略しています。
■吊り革
三角の吊り革は関西ではあまり見かけることがありません。色はグレーで車内色と統一しています。
■荷物棚
荷物棚はアルミ材のパイプ式でスタンションポールと一体化しています。しかし銀色っていうのは何とも冷たいイメージですね。
■LED車内案内表示機
一段表示でドットがでかい! 表示内容も簡素でスクロールもしません。まあ駅間もそれほど長くないのでCMの表示も要らないのですが同時期に登場したJR西日本207系とは雲泥の差ですね。
後に製造されるE231系の近郊型や常磐快速線車などでは二段表示となり運行障害のニュースが表示されたりします。
■運転台
左手操作のワンハンドルマスコン。901系のB編成より採用されたものです。以後、JR東日本の標準となります。
■車番ステッカー
量産車と試作車の車番ステッカーです。試作車のほうは8年ほど前に撮影したので汚いですが。禁煙の表示が異なっています。
■まとめ
1987(昭和62)年に日本国有鉄道は分割民営化し6つの旅客鉄道が発足されました。中でも通勤圏の混雑の激しい区間が多い
東日本旅客鉄道(JR東日本)と西日本旅客鉄道(JR西日本)では全く異なるベクトルを持つ4扉の通勤形電車を独自開発するに至ります。比較されるのはJR西日本207系。209系ではコスト削減と廃車後の再利用など利用者の視点では考えられていません。一方の207系では関西通勤輸送及び汎用性や居住性が重点的に設計されています。これは使用条件の違いからなのですが問題はもっと深いところにあります。
207系は多くの路線に入線できるように増解結の簡略化や地下鉄入線設計がなされた上での合理性の追求。209系は「切捨て」であり、乗り心地の向上は考慮されていないでしょう。それは「VVVFインバーターの世代が一回り遅れている」「制動装置の防音を省略」といった事から推測できます。コスト削減を徹底しているため、どこまでが抑えれるか? 乗客はどこまで許せるのか? といった通勤形電車の在り方について課題を残した車両だったと言えます。
一見皆同じように見えますが製造時期やメーカーによって内装が違っていたり、編成によっては走る時に癖があり、車体はボコボコになって、車内案内表示機は故障が多発して……ホントに多くのネタを提供してくれたエンターテイナー
電車でした。今から思えば結構好きだった車両だったんだなあ。